更新日:2022/01/18 投稿日:2020/06/06
糖尿病が引き起こす合併症
糖尿病は血糖値が上昇する病気ですが、初期段階での自覚症状はほとんどありません。しかし、血糖値が高い状態が長く続くことにより、全身にさまざまな影響を及ぼすようになります。特に血管への影響は大きく、深刻な「動脈硬化」を引き起こすことが知られています。そして生活の質を大きく低下させる合併症や命に関わる恐ろしい合併症を引き起こすことも…。
糖尿病にはどのような合併症があるのか詳しく見てみましょう。
目次
合併症の種類
糖尿病は単に血糖値が上昇するだけではなく、その結果として多くの合併症を引き起こすことが問題となる病気です。糖尿病の合併症はさまざまありますが、代表的なものを挙げると次のようなものがあります。
糖尿病の三大合併症とは?
糖尿病は上でも述べた通り、全身の血管に動脈硬化を引き起こします。動脈硬化とは、血管の壁が柔軟性を失って硬くなったり、血管の内部が詰まったり狭くなったりする病気のこと。動脈硬化を発症すると血流が悪くなり、さまざまな症状が引き起こされます。
とくに糖尿病による動脈硬化は細い血管に及ぶことも多く、いわゆる三大合併症と呼ばれる「網膜症・腎症・末梢神経障害」を引き起こしやすいことが知られています。それぞれの詳しい特徴を見てみましょう。
1 網膜症
網膜は目の奥に存在し、視力を司る大切な組織です。この網膜が正常に活動するには、多くの栄養と酸素が必要。そのため、網膜には多くの血流がキープされています。
糖尿病が悪化し、網膜に血液を送る血管が動脈硬化を起こしてしまうと、詰まったり、破れたりすることで網膜に大きなダメージが加わることに…。そして、目のかすみや視界に細かいゴミが舞うような「飛蚊症」と呼ばれる症状が現れ、最終的には失明に至ります。
2型糖尿病患者を対象にした研究では網膜症発症する人は約3.8%程度であると言われており、決して少なくない割合で発症が確認されています。[1]また、糖尿病網膜症は日本における失明の3番目に多い原因でもあるにも関わらず、[2]糖尿病網膜症が初期だけではなく進行した段階でも自覚症状がないことが多いのが特徴です。[1]ゆがみなどを感じる黄斑浮腫などを発症して初めて視覚障害を自覚することも多いので、早期診断、早期治療が必要です。[1]
網膜症を防ぐためには血糖コントロールが重要です。研究には網膜症がなく血糖コントロールが良好な場合、治療が必要な網膜症への進行は2年で0.3%以下という結果がでており、血糖コントロールをしっかりしていれば網膜症発症リスクをかなりさげることができます。[1]
2 腎症
腎臓は尿を生成する臓器。詳しく見ると非常に細かい血管が固まってできており、血流が非常に多いのが特徴です。というのも、腎臓は流れついた血液から老廃物や余分な水分をろ過することで尿を生成するからです。
糖尿病による動脈硬化はこの腎臓の細かい血管にも及びます。そして、腎臓への血流が低下すると腎臓の機能は低下。それに加え、高血糖によって腎臓の細胞・組織が障害を受けて尿タンパクが増加することでも腎機能の低下します。[3]これらの結果として正常に尿が作られなくなります。尿は、私たちの身体から老廃物や余分な水分を排出するためのものです。そのため、尿が正常に排泄されなくなると体内に老廃物や水分が溜まり、「尿毒症」を引き起こすことなります。
腎症を発症すると厳しい食事制限や運動制限が必要となり、最終的には人工透析や腎移植が必要になります。日本での人工透析導入原因で最も多いものが、失明と同じく糖尿病による腎症です。
一度低下した肝機能の回復は困難であるので、網膜症と同様に少しでも違和感を覚えたら早期診断、早期治療が重要です。[3]
また、腎症は予防として、血糖コントロールと共に、血圧・脂質コントロールも腎症の予防に有効です。[4][5]小さな心がけが大きなリスクへの備えになるので、日頃から腎症予防をすることをオススメします。
3 末梢神経障害
私たちの身体にはいたるところに痛みや温度などを感知したり、筋肉を動かしたりするための神経が張り巡らされています。脊髄や脳など太い神経の束から分岐する神経を「末梢神経」と呼びますが、糖尿病はこの末梢神経にもダメージを与えることがあります。
とくに手足の先端の末梢神経に異常を引き起こすことが多く、原因は動脈硬化によって末梢神経へ送られる血流が低下することと高血糖による神経細胞の変化です。[6] 末梢神経障害を発症すると、まず早期症状としては足の自発痛・しびれ感・錯覚感・感覚鈍麻などの感覚異常が出現することが多く、進行と共に手などにも症状が現れだします。その後、運動神経、自律神経にも障害を認めるようになります。[7]
動脈硬化は命に関わる合併症を引き起こすことも?
糖尿病による動脈硬化は上述した細かい血管のみに起こるわけではありません。心臓や脳など私たちが生きていく上で重要な臓器の血管にも及ぶことがあります。 心臓の筋肉を動かすために必要な酸素や栄養を運ぶのは「冠動脈」と呼ばれる血管ですが、この血管が動脈硬化を引き起こして狭くなったり、詰まったりすると狭心症や心筋梗塞を発症。脳の血管に及ぶと脳梗塞や脳出血の発症率が高くなります。
これらの病気は、発症すると命に関わることも多く、助かった場合でも麻痺など深刻な後遺症を残すことは少なくありません。また、前触れもなく突然発症するケースが多いため、日ごろから発症を予防するような生活を続けていくことが大切とされています。
動脈硬化以外の合併症
糖尿病の合併症は動脈硬化によって引き起こされるものだけではありません。 血糖値が高い状態が続くと、身体の免疫力を担う白血球などの細胞の働きが低下することが分かっています。そのため、糖尿病を発症すると免疫力が低下して傷が治りにくくなったり、風邪を引きやすくなったりするのです。
また、近年では歯茎の炎症である「歯周病」によって、体内に炎症を引き起こす物質が多く作り出されるためにインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇しやすくなることが分かっています。そして、糖尿病を発症・悪化させることで免疫力は低下。それに加えて口腔内乾燥による唾液の減少、過剰な血中ブドウ糖が歯周組織の機能性に与える変化などが原因で[8]、さらに歯周病が悪くなり、糖尿病も悪化という負のスパイラルに陥ることも指摘されています。このため、歯周病は糖尿病の合併症の一つと考えられています。
1つの指標として2型糖尿病患者ではHba1c 6.5%以上になると歯周病のリスクが高まるとされています。[8]
合併症になったら?
糖尿病による合併症を発症した場合は、できるだけ早く病院で適切な治療や生活改善の指導を受けることが大切です。 とくに、網膜症・腎症・末梢神経障害は正しい対処を続けていかなければ失明や人工透析導入、脚の切断など生活の質を大きく損なう状態に陥ることになります。疑わしい症状がある段階で病院を受診すれば、そのような状態に陥るのを食い止めることも可能です。
もちろん血糖値を正常な状態にキープするための薬物療法などは必要ですが、食事や運動、喫煙など糖尿病を悪化させる原因となる生活習慣も改善していくようにしましょう。 また、近年の研究では、歯周病の治療をすると血糖値が下がるとの報告も多数挙がっています。口臭、歯茎からの出血、歯のぐらつきなど気になる症状がある方は歯科医院で診察や治療を受けることが大切です。
合併症の併発を防ぐには?
糖尿病による合併症の併発を防ぐには、何よりも糖尿病の早期発見・早期治療が大切です。糖尿病は初期段階では自覚症状が現れにくく、ご紹介したような合併症が現れて初めて病院やクリニックで受診する方も少なくありません。 糖尿病を早期発見するには、定期的に血液検査を受けてご自身の血糖値の状態を把握する必要があります。どこも悪いところがなければ病院に行く機会はない…という方も多いでしょうが、糖尿病だけでなく、さまざまな病気の早期発見・早期治療のためにも半年~1年に一度は血液検査や腎症の進行度確認のための尿検査、網膜症の進行度確認のための眼科受診などを受けるようにしましょう。
まとめ
糖尿病は、血糖値が高い状態が続くことでさまざまな合併症を引き起こします。網膜症・腎症・末梢神経障害など最終的には生活の質を大きく低下させるもの、心筋梗塞や脳卒中など命に関わるものなどさまざまです。また、免疫力を低下させたり、歯周病を引き起こしたりすることも…。
このような合併症の併発を防ぐには糖尿病の早期発見・早期治療が何よりも大切です。糖尿病には初期症状がほとんどありませんので、定期的に血液検査を受けるようにしましょう。
参考文献
[1](糖尿病診療ガイドライン2019>糖尿病網膜症 129ページ
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-08.pdf)
[2]厚労省2015年
(https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press30/press-180927-6.pdf)
[3](糖尿病診療ガイドライン2019>糖尿病(性)腎症 145ページ
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-09.pdf)
[4](糖尿病診療ガイドライン2019>糖尿病(性)腎症 148ページ
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-09.pdf)
・腎症の発症予防には、その他に、血圧コントロール、脂質コントロールが有効と言われている。
[5](糖尿病診療ガイドライン2019>糖尿病(性)腎症 150-152ページ
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-09.pdf)
[6](糖尿病情報センター>神経障害 PDF 4ページ
http://dmic.ncgm.go.jp/content/060_060_01.pdf)
[7](糖尿病診療ガイドライン>糖尿病(性)神経障害 171ページ
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-10.pdf)
[8]糖尿病と歯周病 220ページ
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-13.pdf)

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